あの頃の自分に届けたい、旅の処方箋

 

海外旅行に行きたい気持ちはあるのに、
体調のことや準備のことを考えると、
少し足が止まることがあります。

 

現地で熱が出たらどうしよう。

薬は何を持っていけばいいんだろう。

保険は入った方がいいのかな。

気持ちが落ちたとき、どうしたらいいんだろう。

 

このブログでは、旅する薬剤師 ボンディオラ が、
旅先で感じやすい不安を、
医療目線も交えながらやさしい言葉でまとめています。

 

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旅と心

旅の終わりが近づくと、気持ちが落ち着かない。帰国前に揺れた話

2026年3月7日

帰る前だけ、気持ちが揺れた

世界一周の最後の拠点は、バンコクでした。

ずっとバンコクにいたわけではなく、ここを拠点にラオス、ベトナム、カンボジアを回って、また戻る。そんな動きをしていて、本当に最後の最後がこのバンコクになりました。

帰国便までの数日を、そこで過ごすことになります。

泊まっていたのは、中心部に近い安ホテルでした。スクンビットではなく、フアランポーン駅の近く。当時はカオサンもにぎやかでしたが、動きやすさを考えてそちらにしました。

当時の値段で、個室にトイレと水シャワーが付いて1泊300バーツくらい。かなり素朴でしたが、1年の旅の最後には、そのくらいがちょうどよかった気がします。


旅の終わりは、意外と地味だった

帰国前の私は、正直ほとんどお金が残っていませんでした。

最後に少し贅沢をする、みたいな余裕はありません。MRTやBTSでサイアムあたりまで行って、買い物はせず、ただ歩く。ショッピングモールの空気だけ味わって帰る。そんな日が続いていました。

ひとつだけ買ったのは、型落ちの安いスマートフォンでした。

旅に出た初日に携帯電話をなくしてしまって、そこから1年近く、地図も連絡手段もノートPCだけで乗り切っていました。最後のバンコクには旧友も多く、ここではどうしても携帯電話で連絡を取りたかったのです。

バンコクは来なれていたし、今さらやることは特にない。でも、そのまったりした感じが、なんだか旅の終わりを妙に実感させてきました。

旅に出る前は、最後はもっと派手に過ごすものと想像していましたが、実際は意外と静かでした。


終わりの日付は、最初から決まっていた

私の場合、世界一周航空券だったので、帰国便の日程は最初から決まっていました。

出発からちょうど1年後。その日付が、最初から動かない形で最初から置かれていたわけです。

この「決まっている感じ」は、あとになるほど効いてきます。旅を続けたい気持ちが少しでもあると、その日が近づくほど終わりを意識するようになる。帰りたくない気持ちが強いほど、その現実が重たく見えてくる。

ずっと先のことだったはずなのに、いつの間にか最後の日はすぐそこに来てました。


気持ちは矛盾していた

空港へ向かう頃の気持ちは、きれいに整理できるものではありませんでした。

帰りたくない。
でも実家に帰って安心したい。
旅が終わるのは寂しい。
でもこのままずっと続けられるわけでもない。
帰ったら仕事を探さないといけない。
それはかなり気が重い。

この全部が同時にありました。帰りたいだけでもないし、帰りたくないだけでもない。その両方がちゃんとある。

今思うと、帰国前の気持ちとはそういう矛盾をそのまま抱えた状態のことで、それが自然な形なのだと思います。


旅が終わるだけじゃなかった

旅が終わるのが寂しい。それはもちろんありました。

でも気持ちが重たかった理由は、それだけではなかったと思います。

帰国したら仕事を探す。
生活を整える。
また日常に戻って、お金のことも考える。

旅の途中では、そのあたりをどこか先の話として置いておけます。でも帰国が近づくと、それが急に目の前に来る。旅の終わりが見えてきたというより、旅のあとが現実になってくる感じでした。

私にとって負担が大きかったのは、たぶんそこだったと思います。


それでも、帰りたい気持ちもあった

矛盾した気持ちの中でも、ひとつだけはっきりしていたものがありました。

実家に帰って、少し安心したい。

旅は自由ですが、その自由の中にはずっと気を張っている感じもあります。長旅だと、なおさらそうです。自分では慣れたつもりでも、最後のほうになると「帰れる場所があること」の意味が少しずつ大きくなってきます。

家族や友人が日本で待ってくれている。
それは当たり前のようで、旅の終わりにはかなり大きいことでした。だから、帰りたくない気持ちだけでなく、帰ってほっとしたい気持ちも本物でした。


今ならこう考える

もし今、同じような時期にいる人に声をかけるなら、帰国前に気持ちが揺れるのはかなり自然なことだと伝えると思います。

対処も、大げさなものでなくていい。

  • 帰国後の最初の1週間は予定を詰めすぎない
  • 仕事探しを、帰国直後から全力で始めようとしない
  • 旅が終わる寂しさを、無理に前向きに片づけない
  • 次の小さな旅行の予定を考えておく

帰国前は、気持ちの切り替えがうまくいかなくて普通だと思います。でもそれは、ずっと続くわけではありません。旅の途中でいろいろな土地に少しずつ慣れていったように、帰国後の生活にも、また少しずつ戻っていけます。


まとめ

帰国前の気持ちは、きれいに整理できるものではありませんでした。

帰りたくない。
でも安心したい。
旅を終わらせたくない。
でも、ずっと続けられるわけでもない。

そんなふうに矛盾した気持ちを抱えたまま、空港に向かっていました。

今思うのは、あの揺れはかなり自然だったということです。旅が本気だったから、終わりも軽くはなかった。

もし今、同じような気持ちの人がいたら、無理にすっきりさせる必要はないと思っています。帰国前に落ち着かなくなるのは変なことではありません。それだけちゃんと旅をしてきた、ということでもあるのかもしれません。


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ボンディオラ


調剤薬局の薬剤師として働きながら、一人旅を中心に80か国ほどを訪れてきました。

このブログでは、旅の楽しさだけでなく、体調、準備、不安、旅先での気持ちの揺れについても、旅する薬剤師の視点からやわらかく書いています。

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