あの頃の自分に届けたい、旅の処方箋

 

海外旅行に行きたい気持ちはあるのに、
体調のことや準備のことを考えると、
少し足が止まることがあります。

 

現地で熱が出たらどうしよう。

薬は何を持っていけばいいんだろう。

保険は入った方がいいのかな。

気持ちが落ちたとき、どうしたらいいんだろう。

 

このブログでは、旅する薬剤師 ボンディオラ が、
旅先で感じやすい不安を、
医療目線も交えながらやさしい言葉でまとめています。

 

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体調管理

海外旅行で標高の高い街に行くときに|高山病のサインと無理をしない目安

2026年2月27日

高地で起こりやすいこと

南米のアンデス地方には、信じられないくらい標高の高い場所に街があったりします。ペルーやボリビアを旅していた頃は、標高3,000m前後の街も珍しくなくて、いつの間にかそれが普通になっていました。

当時は、そういった高い街でも、強い息苦しさや疲れやすさを特に感じませんでした。コロンビアから南米に入り、南下しながら少しずつ標高が上がっていったからだと思います。

一方で、数年前に初めて富士山に登ったときは、8合目から9合目あたりで、はっきりと息苦しさと立ちくらみが出ました。時間をかけずに高い場所へ行ったことが大きかったのだと思います。

この経験から、高山病は「とても高い山に登る人の話」ではなく、旅行中にも十分起こりうるものだと強く感じました。
今回は、そんな経験をふまえて、標高の高い街や観光地へ行くときの心がまえや、無理をしないための考え方について書いていきます。


高山病が起こる理由

高山病は、標高が高くなって空気中の酸素が薄くなることで起こります。登山のときだけの話に見えるかもしれませんが、旅行中でも起こります。たとえば、低地の空港や街から、標高の高い街へ飛行機やバスで一気に移動するような場面です。

とくに起こりやすいのは、こんなときです。

  • 低い場所から急に高い場所へ移動したとき
  • 到着したその日に無理をして動いたとき
  • 寝不足や疲れがたまっているとき
  • お酒を飲みすぎたとき
  • 体調が万全ではないとき

普段の体力があるかどうかだけで決まらないのが、高山病のやっかいなところです。私自身、5,000m台にいた経験があったのに、富士山ではしっかり苦しくなりました。


出やすい変化

高山病というと、頭痛や吐き気を思い浮かべる人が多いと思います。もちろんそれも大事なサインですが、最初は「なんとなくおかしい」くらいの変化から始まることが多いです。たとえば、頭が重い、会話する余裕がない、食欲が落ちる、いつもより明らかに疲労感がある、少し歩いただけで息が上がるなど。

旅先では雰囲気に飲まれたり、自分の気持ちが高ぶったりして、多少の不調があっても意外と気づきにくいことがあります。移動の疲れかな、寝不足かな、と流してしまいやすいのでしょう。

「息苦しさが強い」「頭が重い」「動くのがしんどい」。このあたりが重なってきたら、その日の動き方を見直したいところです。


まず休みたいサイン

次のような状態なら、到着した日は観光を詰め込まない、その日は早めに宿で休むといった考え方でもよいと思います。

  • 頭痛が出てきた
  • 少し吐き気がある
  • 食欲が落ちている
  • だるさがある
  • いつもより息が上がりやすい

アルコールは、いつもより回りやすくなることがあります。飲むとしても少なめにしておくほうが無難です。
一方、トイレが気になっても、水分は意識してとっておきたいところです。

旅には目的地がありますし、毎回すぐに引き返せる状況とは限りません。だからこそ、少ししんどいくらいの段階で予定をゆるめることが大事です。


無理を控えたいサイン

次のようなときは、そのまま観光を続けたり、さらに無理して高い場所へ移動したりしないほうがよいです。

  • 頭痛がはっきりしてきた
  • 吐き気が強くなってきた
  • めまい、立ちくらみがある
  • 息苦しさが強い
  • だるさがひどくなってきた
  • 休んでもあまり楽にならない
  • 食べたり飲んだりしにくい

ここまでくると、「予定の街まで行ってから休む」より、「今日はここまで」に考えをシフトするほうがよいと思います。

症状が落ち着くまで、その街での滞在を続ける。予定を後ろにずらす。それ以上高い場所へは行かない。そういう判断が必要になることもあります。高地では、予定どおりに進むことより、悪くならないことのほうが優先です。


下がることを考えたいサイン

次のような状態なら、休むだけではなく、標高を下げることを考えたい場面です。

  • じっとしていても息苦しい
  • まっすぐ歩きにくい
  • 頭痛がかなり強い
  • 吐いてしまって水分がとれない
  • ぼんやりして反応がおかしい
  • 強いだるさで動けない
  • 唇や爪の血色がわるい

このあたりは、「普通の高山病」で済ませないほうがよいサインです。登山でなく街の滞在でここまで強い症状が出ることは多くありませんが、アンデス地方やヒマラヤ地方のように標高の高い街では起こりえます。

悪化すると危ないことがあるので、無理に滞在を続けず、標高の低い街への移動や受診を考えたいところです。ひとりの場合は、宿の人や周囲の人にも早めに相談してください。


高地の旅のコツ

まずは、行き先の標高が高そうなら、ガイドブックやネットでどんな場所か確認しておくと、心がまえをしやすいです。高い場所に行く旅では、着いたその日に元気でも、少し慎重なくらいがちょうどよいと思っています。

意識しておきたいのは、このあたりです。

  • できれば急に高い場所へ入らない
  • 到着した日は予定を詰めない
  • 水分をこまめにとる
  • 飲酒は控えめにする
  • 眠れなかった次の日は無理をしない
  • 少しでもおかしいなら、その日は上を目指さない

必要に応じて、予防のために薬が使われることもあります。ただ、薬があれば大丈夫というものではありません。私自身、アンデスで大きく崩れなかったのは、少しずつ高度を上げていったことが大きかったと思います。逆に富士山でつらかったのは、順応する時間が足りなかったことと、体調管理の油断からでした。

高地では体が慣れるまで待つことも、ちゃんとした対策のひとつです。急な予定変更の可能性も考えて、旅程を詰め込みすぎず、日数に少し余裕を持っておけると対応しやすくなります。


まとめ

高地の街や観光地でまず覚えておきたいのは、この3つです。

  • 高山病は登山だけでなく、飛行機やバスで高い街へ一気に入る旅行でも起こる
  • 少ししんどいなら無理をせず、その街で休んだり、1泊して体を慣らしたりする
  • 息苦しさが強い、歩き方がおかしい、水分が入らない、反応が変だというときは、下の場所への移動や受診を考える

旅では、どうしても目的地に着きたい日があります。でも、高い場所では急がないことがいちばんの近道になることもあります。
予定どおりに進むことより、ちゃんとたどり着けることを大事にする。私はそのほうが結果として旅を続けやすいと思っています。


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ボンディオラ


調剤薬局の薬剤師として働きながら、一人旅を中心に80か国ほどを訪れてきました。

このブログでは、旅の楽しさだけでなく、体調、準備、不安、旅先での気持ちの揺れについても、旅する薬剤師の視点からやわらかく書いています。