旅先で少し熱っぽい。お腹も少し痛い。でも「このくらいで病院に行くのは大げさかな」と、迷ってしまうこともあると思います。
海外では、自国ではないという不安感がベースにあります。ちょっとした症状でも気になるし、どこまで様子を見ていいのか分からない。その迷いが、さらに不安感をじわじわ大きくしていきます。
大事なのは、何でもすぐ受診することではなく、様子を見てよいラインと、早めに動いたほうがよいラインを分けておくことだと思っています。
なお、帰国後に発熱・咳・発疹・下痢などがある場合や、蚊に刺された、動物に咬まれたといった心当たりがある場合は、検疫所や医療機関への相談が勧められています。受診の際は、渡航先・滞在期間・現地での飲食や活動・動物との接触・ワクチン接種歴なども伝えると、診察がスムーズになります。
この記事では、海外旅行中の受診の目安を、急いで受診を考えたい症状、様子見と受診の分かれ目、症状別の判断、受診するときに伝えたいことの順で整理します。
まずは、急いで受診を考えたい症状
次のような症状は、できるだけ早めに受診したいです。
- 息苦しさがある
- 胸の痛みがある
- ぐったりして動けない
- 水分がほとんどとれない
- 意識がぼんやりする、反応がおかしい
- いつもの下痢よりかなり強い腹痛がある
- 血便がある
- 高い熱が続く
- 動物に咬まれた、引っかかれた
- 大きなけが、止まらない出血、骨折が疑われる
「もう少しだけ」と様子を見続けると、診療時間が終わってしまったり、治療のタイミングを逃す可能性もあります。
ここは、すぐに受診を考えてよいサインとして見ておくと判断しやすいです。
様子を見るか、受診するかの分かれ目
症状を細分化して一つ一つ考えるのは大変だし、そこから検査もしないで病名を推測するのは、専門の医師でないと難しいかもしれません。
私は、海外旅行先での受診については、まずこのように考えます。
例えば、軽い鼻かぜのような症状、一時的な軽い下痢、少しだるくても水分や食事がある程度とれているとき、軽い虫刺されや軽い擦り傷などは、短時間で悪くなっていないかを見ながら、まずは安静にして様子を見る形をとります。
しかし、症状が急に強くなる、水分がとれない、日常動作がかなりきつい、便に血が混じる、息苦しさや胸のあたりに強い痛みがある、数日たっても改善しない、あるいは「いつもの体調不良と明らかに違う」と感じるときは、受診を考えたいところです。
判断の目安となるのは、症状の有無そのことよりも、強さ・続き方・水分や食事がとれているかなどです。
1)発熱があるとき
旅先でいちばん迷いやすいのが、やはり発熱だと思います。
少し熱っぽいだけなら休めばよくなることもありますが、海外では「ただの風邪」とあまり決めつけないほうがよい場合もあります。
帰国時や帰宅後に発熱や発疹がある場合は、海外から帰ったことを医療機関に伝えることが大切です。
早めに受診を考えたい発熱
- 高い熱が続く
- 発熱と解熱をくり返す
- 強いだるさがある
- 発疹を伴う
- ひどい咳や息苦しさを伴う
- 蚊に刺されたあと、数日して発熱した
特に、海外で蚊に刺された数日後に熱が出た場合は、デング熱やマラリアなどをまったく無視することはできません。
早めに治療を開始したほうがよい場合もあるので、発熱の特徴、ぐったり感の強さ、発疹などの有無を見ながら早めに判断したいところです。
2)下痢やお腹の症状があるとき
旅行中は、お腹の不調もよくあります。
ただ、下痢そのものが問題というより、脱水になっていないか、重い感染症のサインがないかを見ることが大切です。
まずは様子を見てもよさそうな下痢
- 回数がそれほど多くない
- 水分がとれている
- 時間とともに落ち着いてきている
- 血便がない
- 発熱がない
早めに受診を考えたい下痢
- 水分がとれない
- 下痢の回数が多い
- 異常な腹痛がある
- 吐いてしまう
- 血便がある
- 発熱を伴う
- 数日たっても改善しない
冷えや、食べ物が合わなかったなど、食あたりの場合が多いと思いますが、海外では少し慎重に考えた方がよい場合もあります。飲食できるか、血が混じるか、熱があるかをまず見ると判断しやすいです。
3)咳、のど、息苦しさがあるとき
のどの痛みや軽い咳だけなら、休養で落ち着くこともあります。
ただ、息苦しさが入ってくると、話は少し変わります。
早めに受診を考えたい呼吸器症状
- 息苦しい
- 胸が痛い
- 咳がどんどん強くなる
- 痰に血が混じる
- 高熱を伴う
- ぐったりしている
- 標高が高い場所にいる
呼吸器の症状も、悪化していくと治療に抗生物質などが必要となる場合があります。また、周囲に影響を及ぼす感染症の場合もあります。
旅行中、帰国後にかかわらず、受診時は旅行歴を医療者に伝えることを忘れないようにしたいです。
4)動物に咬まれた・引っかかれたとき
ここは、迷ったら受診する方向でよいと思います。
見た目が小さな傷でも、動物に咬まれた・引っかかれた場合は、あとから発症する感染症があるからです。
受診を考えたい理由
- 傷が小さくても感染症の心配がある
- 現地での処置が必要なことがある
- 後回しにすると処置が大変になる可能性がある
「大した傷じゃないし大丈夫かな」と思ってしまいやすいのですが、ここは早めに動いておくほうが安心です。重症かどうかでなく、「安心」を得るために受診する形です。
5)けが、転倒、事故のあと
体調不良だけでなく、旅先ではけがもあります。
転倒、交通事故、海や山でのトラブルなどは、「我慢できるから大丈夫」だけで判断しないほうがよいこともあります。
受診を考えたいけが
- 頭を強く打った
- 眠れないほど強い痛みがある
- 腫れがひどい
- 出血が止まりにくい
- 体を動かしにくい
- 骨折が疑わしい
- ※海外旅行保険、責任の所在などが関係する場合
いつも通りに動けるか、旅行を続けられそうかが基準になると思います。
頭を強く打った場合は、痛みが強くなくても、受診時に忘れずに伝えておきたいです。
「※海外旅行保険、責任の所在などが関係する場合」だけ異質ですが、海外のアクティビティでの事故、タクシーやバスでのケガなどの場合は、大きなケガでなくても受診したほうがよいケースがあります。
あとで悪化してしまった場合や、相手が責任を否定するのを防ぐためです。
また、海外旅行保険の請求に必要な書類は、受診しなければ手に入らないものもあります。
受診するときに伝えたいこと
病院に行くと決めても、何を伝えればいいか迷うことがあります。
ここを最初に整理しておくと、受診がかなりスムーズになります。
帰国後に受診する場合は、FORTHの 「病院にかかる前のチェックシート」 も役立ちます。
事前に印刷して、書けるところだけでも記入しておくと、受診のときにかなり伝えやすくなります。
現地での受診か帰国後の受診かにかかわらず、私は、受診するときは「症状」だけでなく、観光だったのか、長期滞在だったのか、自然の多い場所にいたのかといった渡航の背景も一緒に伝えることが大事だと思っています。
その情報があるだけでも、医療者が考える病気の候補や、気にするポイントが変わることがあります。
- いつから症状があるか
- どの国・地域にいたか
- 何を食べたか、どんな飲み物を飲んだか
- 虫に刺されたか
- 動物に咬まれたか
- 発熱、下痢、咳、発疹など出ている症状すべて
- 持病や飲んでいる薬
- 海外旅行保険に入っているか
海外旅行保険に入っている場合は、受診前に保険会社のサポートデスクに連絡すると、よりスムーズに手続きが進む可能性が高まります。都市部であればキャッシュレス診療が使える場合があり、特に医療費が高額となりやすい国や地域では非常に助かります。
自分で受診する場合も、事後の保険金請求にどのような書類が必要なのかを、保険会社に確認しておくとよいです。
診断書(Medical Certificate)、領収書(Receipt)、明細書(Itemized Bill)、投薬内容(Prescription)などが必要なことが多いと思います。受診する際に保険加入を伝えておくと、セットで発行してくれたり、適したフォーマットで発行してもらいやすくなります。
海外旅行保険に入っていない場合や、現地で受診先に迷ったときは、滞在先を管轄する日本大使館・総領事館に相談するのも手です。英語や日本語の通じる医療機関が分かるかもしれません。
- 外務省 在外公館リスト
病気に限らず、現地で困ったことがあった時の相談先です。 - 外務省 世界の医療事情
現地の医務官自身が収集した情報を掲載してくれています。国ごとに、医療機関の掲載もあり。
海外旅行保険について検討する場合は、こちらの記事もどうぞ。
帰国後も注意しておく
感染症の中には、帰国してすぐではなく、数日から数十日たってから症状が出るものもあります。
帰国後しばらくは体調の変化に気をつけて、発熱や下痢、咳、発疹などがあれば受診するようにしましょう。その際は、海外から帰ったことを先に伝えることが大切です。
地域の情報は、最新確認が大切
受診の目安そのものは大きく変わりませんが、何を強く疑うかは地域で変わります。
たとえば、同じ発熱でも、渡航先によって考える感染症は違いますし、その状況も変わることがあります。
旅行の前には、厚生労働省検疫所の FORTH(海外で健康に過ごすために) などで流行状況や渡航先の注意点を見ておくと、対策を立てやすくなります。
また、国・地域別の危険情報や感染症危険情報は、外務省の 海外安全ホームページ で確認できます。
短期旅行なら、出発前に たびレジ へ登録しておくと、現地の安全情報や緊急時の連絡も受け取りやすいです。
まとめ
海外で病院に行く目安を考えるときに大切なのは、症状から病名を検索することより、受診を考えたいサインを見逃さないことです。
少しの不調なら、休んで水分がとれていて、悪化していないかを確認しながら様子見できることもあります。
しかし、水分がとれない、息苦しい、眠れないほど強い痛みがある、便に血が混じる、ぐったりして動けないといったときは、早めに受診を考えたほうが安心です。
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参考情報
旅行前や旅行中に、渡航先の感染症情報や安全情報もあわせて確認しておくと安心です。確認先として使いやすいのは、次の4つです。
- FORTH(厚生労働省検疫所)
海外の感染症情報、渡航中・帰国後の体調不良、受診時に伝えたいことなどの確認に。 - 外務省 海外安全ホームページ
国・地域別の危険情報、感染症危険情報、たびレジの案内を確認できます。 - 外務省 在外公館リスト
現地で困ったとき、連絡先を確認したい場合に役立ちます。 - 外務省 世界の医療事情
現地の医務官自身が収集した情報を掲載してくれています。国ごとに、医療機関の掲載もあり。







