あの頃の自分に届けたい、旅の処方箋

 

海外旅行に行きたい気持ちはあるのに、
体調のことや準備のことを考えると、
少し足が止まることがあります。

 

現地で熱が出たらどうしよう。

薬は何を持っていけばいいんだろう。

保険は入った方がいいのかな。

気持ちが落ちたとき、どうしたらいいんだろう。

 

このブログでは、旅する薬剤師 ボンディオラ が、
旅先で感じやすい不安を、
医療目線も交えながらやさしい言葉でまとめています。

 

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準備・移動

海外旅行の常備薬|何を持っていくと安心か

2026年2月27日

常備薬の考え方

世界一周に出発したとき、私のバックパックには大きな救急ポーチが入っていました。熱さまし、胃薬、整腸剤、ビタミン剤、目薬、塗り薬……。「海外では買えないかもしれない」「病院に行けなかったら困る」、そんな不安から、とりあえず持てるだけ持つという選択をしていたのです。

でも、旅を続けるうちに、持てるだけ持つことが正解ではないと感じるようになりました。実際には現地で買えるものもありますし、本当に大事なのは「全部そろえること」より、「自分に必要なものを外さないこと」だったりします。

今の私が、海外旅行の常備薬について大事だと思っているのは、この3つです。

  • 持病の薬は必ず持つ
  • いつも使っている薬を少しだけ持つ
  • 薬を増やすより、“受診の目安”を知っておく

たくさん持つことが、そのまま安心につながるとは限りません。むしろ自分にとって本当に必要なものが分かっていることのほうが、旅先では頼りになります。


1)持病の薬は最優先

高血圧、喘息、糖尿病、てんかん、緑内障など、ふだんから治療を続けている薬がある人は、ここは別枠です。

持病の薬は必ず持参。症状が悪化した時だけ使う頓服薬もここに入ります。
ここだけは「念のため」ではなく、本当に大事な準備です。旅行中に薬が切れると体調を崩すだけでなく、現地で同じ薬を探したり、成分や使い方を説明したりするハードルが一気に上がります。
旅は、遅延や延泊、荷物のトラブルみたいな想定外が起きることがあります。なので日数ぴったりではなく、少し余裕を持たせておくと安心です。

インスリンなど自己注射の薬がある人は、薬の説明を用意しておくと、手荷物検査や税関でも落ち着いて対応しやすいです。不安な場合は、「くすりのしおり」で英語版の説明が用意できるか確認してみてもよいと思います。見つからないときは、薬局で相談すると力になってくれるでしょう。

また、できれば主治医にも相談しておきたいところです。残りがギリギリなら余分に出してもらえることがありますし、旅先で気をつけたいことも聞けるかもしれません。


2)短期旅行は最低限でいい

1週間くらいの短期旅行なら、薬をたくさん持っていかなくても困らないことが多いです。不安があると全部そろえたくなりますが、まずは「自分が旅先で困りやすいもの」から考える方が決めやすいです。

私が短期旅行で「持つならこのくらいかな」と思うのは、だいたい次の3つです。

  • いつも飲み慣れている発熱や痛み止めの薬
  • 胃が弱い人は、自分に合う胃薬
  • ばんそうこうなどの簡単なケア用品

このくらいでも、ちょっとした不調には対応しやすくなります。逆に、普段ほとんど使わない薬まで増やしてしまうと、荷物になるだけでなく、自分でも何を持ってきたのか分かりにくくなることがあります。多くの国には薬局がありますし、翻訳アプリを使えば相談できる機会もあります。


3)持っていく薬の考え方

ここからは、長期旅行も含めて私自身が持つならどう考えるか、という例です。選び方の参考として読んでもらえるとちょうどいいと思います。旅行日数や行き先、ふだん出やすい不調が分かっていると選びやすいです。

希望に近い薬がよく分からないときは、薬局で薬剤師に相談してみるのも一つです。

熱や痛みどめ

旅先で出番が多いのは、やっぱり熱や痛みどめでしょう。頭痛、生理痛、発熱、筋肉痛、歯の痛みなど、「今ちょっと落ち着かせたい」という場面は意外とあるもの。熱や痛みどめは、そういうときのために、使い慣れているものを少し持っておくと役立ちます。

新しく強そうな薬を買うより、普段から使っていて、自分の体に合うと分かっているものを持っていくほうが安心です。
胃が荒れやすい方は、胃に負担が少ないものを優先すると使いやすいと思います。

整腸剤

お腹の調子は、食べ物や水、緊張、移動の疲れだけでも崩れやすいです。整腸剤を普段から飲んでいる人なら、それを少し持っていくとよいと思います。逆に普段まったく使わない人が、不安だからと新たに買う必要はないかなと思います。

軽い不調の段階なら、整腸剤や水分、食事の調整で落ち着くこともあります。一方で、高熱や強い腹痛、血便などがあるときは、薬で様子を見るより受診を考えたいところです。

胃薬

胃が弱い人にとって、胃の不調は旅の満足度にかなり響きます。食事を楽しみにしていたのに、胃が重いだけで一気に気分が落ちてしまったらもったいないですよね。日本でも胃薬を使うことがある人は、使い慣れているものを少し持っていくと安心です。

ここも人によって必要性がかなり違います。胃薬が必要ない人は、無理に持たなくて大丈夫です。逆に胃が弱い人は、ここは少し力を入れて準備しておくと後悔しにくいと思います。

酔い止め

飛行機よりも、長距離バス、船、山道の車移動で酔いやすい方もいます。乗り物酔いが心配な方は、使い慣れた酔い止めを持っておくと安心です。

ただし、眠気が出やすい薬もあるので、移動後の予定が詰まっているときは、その点も考えて選びましょう。

虫よけスプレー・かゆみ止め

虫に刺されやすい地域へ行くなら、虫よけスプレーやかゆみ止めを持っておくと便利です。

大事なことは、虫刺されの対策はかゆみ止めを持つことよりも、まず刺されにくくすることです。私は行き先によっては、虫よけスプレーの優先度がかなり高くなります。このあたりは海外旅行の虫よけ・蚊対策にまとめているので、参考にしてみてください。

貼り薬や湿布

トレッキングなど長時間の移動や歩きすぎで、肩や腰、足がつらくなることもあります。貼り薬や湿布は、使い慣れている方なら持っていってもよいと思います。

ただ、湿気が多い地域だとかぶれの心配もあるし、厚いタイプだと荷物との兼ね合いもあります。優先度としては低くみてよいでしょう。


4)抗生剤は慎重に

数か月以上の長期旅行になると、抗生剤を持参したくなる人もいるでしょう。不安な気持ちはすごく分かります。ただ、旅行用に念のために持って行くという考え方は、私はあまりおすすめしていません。

抗生剤は、本当に細菌感染が疑われるときに使う薬です。「熱が出たから」「お腹をこわしたから」といって、自己判断で使うとかえって状況が分かりにくくなることもあります。

今は薬剤耐性菌の問題もあって、医師も処方に慎重です。旅行用の予備は保険適用にならず自費になることもありますし、自費であっても簡単には処方されないことがあります。

国によっては処方箋なしで買えることもありますが、知識がない状態での自己判断は避けたほうが安全です。実際は使いどころが難しい薬と考えておくほうがいいと思います。


5)受診の目安

ここまで「何を持つか」を見てきましたが、旅先では薬そのものより「どこで受診を考えるか」の判断のほうが大事です。

たとえば、こんなときは早めに受診を考えたいところです。

  • 高熱が続く
  • 血便がある
  • 強い腹痛が続く
  • 意識がぼんやりする
  • 水分がとれない(飲む量より出る量の方が多い)

常備薬は、「受診しなくて済むようにするもの」ではありません。
ちょっとした不調をやわらげたり、旅先で落ち着いて動くための助けになるもの、と考えておく方が使いやすいと思います。


まとめ

海外旅行の常備薬については、こう考えるとまとまりやすいです。

  • 持病の薬は必ず持つ
  • いつも使っている薬を少しだけ持つ
  • 薬とあわせて、受診の目安も頭に入れておく

たくさん持つことで安心できる場合もありますが、それ以上に、自分に必要なものが見えていることの方が大事です。そのうえで、旅の条件や日数に合わせての「小さな備え」が、常備薬なんだと思っています。


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参考情報

ボンディオラ


調剤薬局の薬剤師として働きながら、一人旅を中心に80か国ほどを訪れてきました。

このブログでは、旅の楽しさだけでなく、体調、準備、不安、旅先での気持ちの揺れについても、旅する薬剤師の視点からやわらかく書いています。