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海外旅行の常備薬、何を持っていく?

世界一周した薬剤師の考え方

はじめに|救急ポーチは、途中で軽くなった

世界一周に出発したとき、私のバックパックには大きな救急ポーチが入っていました。

解熱鎮痛薬、胃薬、整腸剤、抗生剤、ビタミン剤、軟膏、目薬……。
「海外では手に入らないかもしれない」「病院に行けなかったら困る」

中米という初めての土地からのスタートだったこともあり、不安はかなり大きかったのだと思います。

けれど正直に言うと、その薬の多くは旅の途中で処分しました。

重くて、かさ張って、邪魔だったからです。

もったいないと思いながらも、「これはたぶん使わない」と判断して手放しました。
一方で、本当に必要になった薬は、現地で購入することもありました。

あの経験から強く思うのは、

持ちものの量ではなく、「自分で判断できること」が安心につながる

ということです。

短期旅行(1週間程度)の考え方

まず考えるべきは「常用薬」

1週間ほどの旅行であれば、特別な薬を大量に持っていく必要はほとんどありません。

ただし、例外があります。

持病のための常用薬は必ず持参すること。

高血圧や脂質異常症、喘息、甲状腺疾患など、
日常的に服用している薬は絶対に忘れてはいけません。

これは「念のため」ではなく、「必須」です。

できれば滞在日数より少し余裕を持って準備しておくと安心です。

インスリンなど自己注射薬について

持病のためにインスリン注射や自己注射薬を使用している場合は、もちろん必ず持参します。
機内持ち込みも可能ですが、保安検査や税関で説明を求められることがあります。

不安な場合は、
「くすりのしおり」のウェブサイトから
英語版の薬剤説明書をダウンロードしておくと安心です。
薬剤名・成分名・使用目的が英語で記載されているため、説明の助けになります。

また、インスリンを複数本持って行く場合は、温度管理が必要なため、保冷ケースの準備や、現地での保管方法も事前に確認しておくと安心です。

自己注射薬を持参する場合は、できるだけ主治医に相談しておきましょう。
残薬がギリギリなら余分に出してくれたり、専門医ならではのノウハウを聞くことができるかもしれません。

次に考えるのは「いつも使っている薬」

それ以外については、もっとシンプルでいいと思います。

たとえば、

・いつも飲み慣れている頭痛薬
・自分の体に合っている整腸剤
・よく使う胃薬

こうした「普段から使っている薬」を少量。

これだけでも十分なことが多いです。

「ビオフェルミンを飲まないとお腹の調子が不安定になる」
そんな方なら、持っていく価値はあります。

大事なのは、“新しい薬を大量に持つこと”ではなく、
自分の体が慣れている薬を少量持つこと。

多くの都市には薬局があります。
観光地であればなおさらです。

困ったときにどうするかを想像しておくことのほうが、実は大きな安心になります。

湿布や経口補水液はどうする?

筋肉痛や関節痛が不安で湿布を持ちたい、という方もいるかもしれません。

ただ、海外では湿布はあまり一般的ではありません。
痛み止めは内服薬が主流です。

かさ張ることを考えると、どうしても必要な場合のみ最低限でよいでしょう。

経口補水液も同様です。

粉末タイプでも、まとめると意外と重くなります。
嘔吐や下痢のときは、水分とナトリウム・カリウムなどのミネラル補給を意識する。

多くの国でスポーツドリンクのような飲料は手に入ります。

「絶対に必要」というよりは、
あれば便利なこともある、という位置づけで十分だと思います。

長期旅行(数か月)の考え方

抗生剤をどう考えるか

数か月単位の旅になると、不安は少し現実味を帯びます。

「医療体制は大丈夫だろうか」
「強い感染症になったらどうしよう」

そこで抗生剤を持参したいと考える方もいるでしょう。

出発前に医師へ相談することは可能です。
ただし、医療保険は基本的に“治療”に対して適用されるため、旅行用の予備であれば自費になります。

そして現在は、薬剤耐性菌の問題もあり、医師も抗生剤の処方には以前より慎重です。

日本でも海外でも、抗生剤は
本当に細菌感染が疑われる場合に使う薬です。

「念のために持っておく安心薬」ではありません。

ニューキノロン系やペニシリン系といった説明を受けることはできます。
けれど、

“今飲むべきかどうか”を自分で判断するのは簡単ではない

という現実があります。

海外では処方箋なしで購入できる国もあります。
薬局で相談できる環境もあります。

それでも迷うときは、受診を選ぶ。

これが結果的にいちばん安全で、いちばん安心につながることが多いと感じています。

結局、何を持てばいいのか

世界一周で私が学んだことを、まとめるとこうなります。

持病の常用薬は必須。絶対に忘れない。
普段使っている頭痛薬や整腸剤を少量。
むやみに増やすより、「受診すべき症状」を判断できることが大切。

・38度以上の発熱が続く
・血便が出る
・今まで経験のない強い腹痛がある
・意識がぼんやりする

こうしたサインを知っているだけで、
救急ポーチの中身は自然と整理されます。

安心は、薬の数では決まりません。

安心は、
「これは様子を見ていい」
「これは受診する」
と決められることから生まれます。

私の救急ポーチはいま、とても小さくなりました。

でも、その中身よりも、
少しだけ増えた判断力のほうが、
きっと役に立っているのだと思います。

ボンディオラ

薬剤師。単独で世界一周を経験。 旅先で体調管理などで苦労をした経験から、 海外旅行と健康・薬について発信中。

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