※ワクチン全体の考え方を先に確認したい人は、こちらから読むとつながりやすいです。
事前接種していても、それで終わりではない
狂犬病ワクチンは、少し誤解されやすいです。
事前に打っておけば、噛まれてももう大丈夫
というものではありません。
ここは最初に知っておきたいところです。
狂犬病がある地域で、犬や猫をはじめとした野生動物に噛まれたり、引っかかれたり、傷口をなめられたりしたら、事前にワクチンを打っていても、その後の受診と追加接種が必要になります。
噛まれた直後にやること
ここは、事前接種あり/なしに関係なく共通です。
- 傷口をすぐに石けんと流水でしっかり洗う
- できるだけ早く医療機関に連絡・受診する
とくに傷を洗うことはとても大事です。「事前に打っていたから、少しくらいは大丈夫だろう」は避けたいです。
噛まれたら、まず洗う。
そのうえで早めに受診する。
ここがいちばん大事です。
なお、きちんとワクチン接種されている犬であれば、噛まれたりしたあとの予防接種が不要とされることもあります。
ただ、旅先ではその確認が難しいことも多いので、「たぶん大丈夫」ではなく、上記の対応を取るほうがよいと思います。
事前接種あり/なしの違い
違いは、噛まれた後の対応の大変さです。
事前接種していない場合
事前接種していない場合、噛まれたあとに必要になるのは、以下の処置です。
- 狂犬病ワクチンの複数回接種
- 接触の程度によっては、狂犬病免疫グロブリン(RIG)
特に対応が難しくなりやすいのが、RIGが必要になるケースです。旅先では、このRIGが手に入りにくいことがあります。日本でも同様なので、帰国まで待つのではなく、できるだけ早く現地の医療機関に相談することが大切です。
事前接種している場合
事前接種している場合でも、噛まれたあとの受診と追加接種は必要です。
ただし、RIGが必要になりにくいこと、その後のワクチン接種が軽くなりやすいことが大きな違いです。
事前接種のメリット
事前接種のいちばん大きな意味は、噛まれた後の対応を少し楽にすることです。
RIGが必要になりにくく、その後の接種負担も軽くなりやすい。地方や離島、移動中などでも、次の行動を考える余裕が生まれやすくなります。
RIG(狂犬病免疫グロブリン)は、噛まれた後に注射する薬剤ですが、発展途上国の地方では、全ての病院に在庫があるとは限りません。大都市まで数時間移動してようやく治療が受けられる、というケースも考えられます。事前接種があると、このRIGが原則不要になるため、受診先の選択肢が広がりやすくなります。
また、接種回数の面でも違いがあります。事前接種なしの場合、噛まれた後により多くの回数の接種が必要になります。体への負担だけでなく、旅程の調整や費用の面でも、事前接種の有無は影響してきます。
「打ってあるから大丈夫」とは考えない
ここは誤解されやすいので、改めて書いておきたいです。
事前接種していても、していなくても、噛まれたらできるだけ早く受診が必要です。
なぜ急ぐ必要があるかというと、狂犬病は発症してしまうと有効な治療法がほとんどないためです。「打ってあるから少し待っても大丈夫」とは考えないほうが安全です。事前接種の意味は、受診を遅らせてよくなることではなく、受診後の対応を少しだけ楽にすることにあります。
事前接種を考えたい旅
ここは、旅の内容で優先度が変わります。たとえば、こんな旅です。
- 数か月以上の長期旅行
- 農村部や離島など、病院にすぐ行けない場所に行く
- 自転車やバイク移動が多い
- 野外活動が多い
- 犬や猫が多い地域に行く
- 動物との距離が近くなる旅
逆に、都市中心の短期旅行なら優先度は下がることもあります。このワクチンも、それぞれの旅の条件で見ていくほうが判断しやすくなります。
迷ったときの相談先
狂犬病ワクチンは、必要かどうかを一律には決めにくいワクチンです。
- どこに行くのか
- どれくらい滞在するのか
- どんな移動が多いのか
- 動物との距離が近くなりそうか
このあたりで優先度がかなり変わります。
自分で決めきれないときは、トラベルクリニックで旅程を見せながら相談すると、適切なアドバイスがもらえることもあります。
まとめ
狂犬病ワクチンでまず知っておきたいのは、この3つです。
- 事前接種していても、噛まれたらすぐ洗って早めに受診する
- 事前接種の意味は、噛まれた後の対応を軽くしやすいことにある
- 長期旅行、遠隔地、動物との距離が近い旅では優先度が上がりやすい
事前接種は、完璧な予防ではありません。でも、旅先での対応を少し軽くしてくれるものではあります。
噛まれた後に困りやすいのは、治療の内容より、その場で必要な対応ができないことです。狂犬病ワクチンは、噛まれた後に慌てすぎないための準備として見ると、少しつかみやすいと思います。
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