脱水の怖さ
スペインのバレンシアでのことです。
友人のフラットに転がり込んで、広いテラスでのんびり過ごしていました。
真夏の強い日差し。
乾いた空気。
私はウォッカを飲みながら、ただ日向ぼっこをしていました。
次に気がついた瞬間、私は浴室にいました。
シャワーをかけられ、バケツで水を浴びせられ、仲間たちに囲まれていました。
何が起きたのか、まったく分かりませんでした。
聞くと、私は突然意識を失って倒れたらしいんです。
自覚はゼロでした。
少しふらついたとか、視界が暗くなったとか、そういうはっきりした記憶もありません。
本当に、いつの間にか途切れていました。
熱中症でいちばん怖いのは、「危ない」と思う前に進んでいることがあるところだと思います。
旅先では、暑さそのものだけでなく、移動、寝不足、飲酒、緊張、休憩不足が重なります。
特別に無理をしていなくても、気づかないうちに脱水や熱中症に近づいていることがあります。
倒れる前に気づくためには、強い症状だけでなく、少し早い段階のサインを知っておくことが大事です。
海外旅行で脱水しやすい場面
脱水や熱中症は、真夏の炎天下だけの話ではありません。
旅では、次のような場面で起こりやすいです。
- 暑い場所を長く歩く
- 湿度が高くて汗をかきやすい
- トイレを気にして飲む量が減る
- 休憩を後回しにする
- お酒を飲む
- 下痢や発熱が重なる
たとえば東南アジアのような蒸し暑い地域では、頑張って観光していると、ふと
「今日はまだトイレに行っていないな」
と気づくことがあります。
これは、体からのかなり分かりやすいサインです。
脱水は、派手に始まるわけではありません。
だからこそ、倒れる前の小さな変化を拾えるかどうかが大事です。
脱水に気づくヒント
脱水は、いきなり倒れる前に、少しずつ変化を出していることがあります。
ここでは、旅先で見落としたくないヒントを先に整理します。
- トイレの回数が減る
- 尿が少なく色が濃い
- 立ち上がるとふらつく
- 頭痛がする
- 口や唇が乾く
- 体がだるい
- なんとなく力が入らない
このあたりは、旅先では見落としやすいです。
疲れかな、寝不足かな、歩きすぎたかな、と流してしまいやすいからです。
でも今の私なら、
「今日は尿が少ない」
「立つと少しふらつく」
「頭が重い」
このあたりが重なったら、一度きちんと休む方向で考えます。
「まだ歩けるから大丈夫」ではなく、
このまま続けると悪くなりそうか
で見るほうが判断しやすいです。
休んで様子を見たいサイン
次のような状態なら、まずは涼しい場所に移動して、休みながら様子を見ることが多いです。
- 意識ははっきりしている
- 水分がとれる
- 少し休むと楽になる
- 吐いていない
- ふらつきが強すぎない
- 自分で歩いて移動できる
この段階なら、日陰や冷房のある場所に入って、座るか横になるだけでも違います。
帽子や上着をゆるめて、体を冷やしながら、水分を少しずつ入れていく。
それだけで落ち着いてくることもあります。
旅先だと、「あとひとつだけ見たい」「ここまで来たから頑張りたい」と思いやすいものです。
でも、脱水や熱中症は、そこで無理をすると一気につらくなることがあります。
早めに切り上げたいサイン
次のようなときは、少し慎重に見たいところです。
- 頭痛が強くなってくる
- 吐き気がある
- だるさがかなり強い
- ふらつきが目立つ
- 水分は飲めるけれど、飲んでも良くならない
- 尿がかなり少ない
- 休んでもつらさがあまり変わらない
ここは、ただの疲れで片づけないほうがよい場面です。
歩けるけれど明らかにしんどい、休んでも回復しにくい。
そんなときは、そのまま観光を続けないほうがよいと思います。
この段階では、予定を軽くする、いったん宿に戻る、必要なら医療機関も視野に入れる。
そのくらいで考えておくと判断しやすいです。
旅先では、「病院に行くほどではない気もするけど、もう無理はしないほうがいい」という境目が迷いやすいところです。
だからこそ、少し早めに切り上げるくらいでちょうどよいことがあります。
急いで対応したいサイン
次のような状態なら、休憩だけで様子を見るより、早めに助けを求める方向で考えたいです。
- 意識がぼんやりする
- 呼びかけへの反応がおかしい
- 水分がほとんどとれない
- 吐いてしまって飲めない
- 自分で歩くのが難しい
- ぐったりして動けない
- けいれん
- 倒れた
このあたりは、かなり注意したいサインです。
熱中症は、「ちょっとしんどい」から少しずつ悪くなることもありますが、気づいたときにはかなり進んでいることもあります。
意識や行動がおかしい、水分が入らない、立てない。
そういう変化があるときは、様子見を長引かせないほうがよいです。
水分補給は何をどう飲むか
脱水対策というと、「とにかく水を飲む」と思いがちです。
もちろん、水分を入れること自体は大事です。
ただ、汗をたくさんかいたときや、脱水が進みかけているときは、水分だけでなく電解質も一緒に失われています。
なので、可能なら経口補水液が使いやすいです。
しかし、海外では、経口補水液が日本ほど気軽に買えないこともあります。
そういうときは、水しかないなら水でも十分意味がありますし、スポーツドリンクのようなものがあれば、水だけより向いていることがあります。
大事なのは、完璧な飲み物を探して飲めなくなることではなく、飲めるものを少しずつ入れることです。
一気に飲むと気持ち悪くなることもあるので、まとめて飲むより、少しずつ続けて飲んでいくほうが合うことも多いです。
アルコールと炎天下は危ない組み合わせ
旅行中は、ついお酒を飲みたくなることもあります。
でも、暑い場所では、この組み合わせはかなり注意が必要です。
アルコールを飲むと、水分管理が雑になりやすいですし、自分の変化にも気づきにくくなります。
私がバレンシアで倒れたときも、
炎天下、飲酒、水分不足
という、かなりよくない条件がそろっていました。
お酒そのものが絶対だめというより、
暑い場所で長く過ごす日とは重ねない
くらいで考えておくほうがよいと思います。
対処の目安
ここまでの内容を、実際の動きにまとめるとこんな感じです。
体を休めたほうがよいサイン
- 尿が少ない
- 口が乾く
- 立つと少しふらつく
- 頭が重い
- 体がだるい
このあたりなら、まずは日陰や冷房のある場所に移動して、水分をとりながら休む。
それだけでも変わることがあります。
予定を切り上げたほうがよいサイン
- 休んでもしんどさが残る
- 頭痛や吐き気が強くなってくる
- 水分をとってもよくならない
- ふらつきが目立つ
- かなり消耗している感じがある
この段階まできたら、「まだ行けるか」より「今日はここでやめたほうがいいか」で考えるほうが、旅全体ではうまくいきやすいです。
まとめ
海外旅行で脱水や熱中症が怖いのは、自分では気づきにくいまま進むことがあるところです。
まず覚えておきたいのは、この3つです。
- トイレの回数が減る、尿が濃い、立つとふらつく、頭痛がする。こうした小さなサインを見落とさない
- 水分がとれていて少し休めば楽になるなら、まずは涼しい場所でじゅうぶん休む
- 意識がぼんやりする、水分が入らない、立てない、倒れた。そういうときは受診も含め早めの対応を考える
私自身、倒れたときは、まったく前触れに気づけませんでした。
だからこそ今は、「まだ大丈夫」より、「少し怪しいなら先に休む」を大事にしたいと思っています。
脱水や熱中症は、派手な病気ではありません。
でも、旅を一瞬で止めてしまうことがあります。
旅を続けるために、意識して水を飲む。
トイレの回数を見る。
少しでも違和感があれば休む。
まずは、そのくらいで十分です。
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