あの頃の自分に届けたい、旅の処方箋

 

海外旅行に行きたい気持ちはあるのに、
体調のことや準備のことを考えると、
少し足が止まることがあります。

 

現地で熱が出たらどうしよう。

薬は何を持っていけばいいんだろう。

保険は入った方がいいのかな。

気持ちが落ちたとき、どうしたらいいんだろう。

 

このブログでは、旅する薬剤師 ボンディオラ が、
旅先で感じやすい不安を、
医療目線も交えながらやさしい言葉でまとめています。

 

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体調管理

海外旅行で脱水・熱中症にならないために|倒れる前に気づきたいサインと休み方

2026年3月4日

熱中症の怖さ

スペインのバレンシアでのことです。友人のフラットに転がり込んで、広いテラスでのんびり過ごしていました。
真夏の強い日差し。乾いた空気。私はウォッカを飲みながら、ただ日向ぼっこをしていました。

次に気がついた瞬間、私は浴室にいました。シャワーをかけられ、バケツで水を浴びせられ、仲間たちに囲まれていました。何が起きたのか、まったく分かりませんでした。

聞くと、私は突然意識を失って倒れたらしいんです。
自覚はゼロでした。少しふらついたとか、視界が暗くなったとか、そういうはっきりした記憶もありません。本当に、いつの間にか途切れていました。

熱中症でいちばん怖いのは、「危ない」と思う前に進んでいることがあるところだと思います。

旅先では、暑さそのものだけでなく、移動、寝不足、飲酒、緊張、休憩不足が重なります。特別に無理をしていなくても、気づかないうちに脱水や熱中症に近づいていることがあります。
倒れる前に気づくためには、強い症状だけでなく、少し早い段階のサインを知っておくことが大事です。


海外旅行で脱水しやすい場面

脱水や熱中症は、真夏の炎天下だけの話ではありません。旅では、次のような場面で起こりやすいです。

  • 暑い場所を長く歩く
  • 湿度が高くて汗をかきやすい
  • トイレを気にして飲む量が減る
  • 休憩を後回しにする
  • お酒を飲む
  • 下痢や発熱が重なる

たとえば東南アジアのような蒸し暑い地域では、頑張って観光していると、ふと「今日はまだトイレに行っていないな」と気づくことがあります。これは、体からのかなり分かりやすいサインです。

脱水は、急に始まるわけではありません。だからこそ、倒れる前の小さな変化を拾えるかどうかが大事です。


脱水に気づくサイン

脱水は、いきなり倒れる前に、少しずつ変化を出していることが多いです。
ここでは、旅先で見落としたくないサインを先に整理します。

  • トイレの回数が減る(尿意を感じない)
  • 尿量が少なく色が濃い
  • 手の甲や腕の皮膚に張りがない
  • 立ち上がるとふらつく
  • 頭痛がある
  • 口や唇が乾く
  • 体がだるい
  • なんとなく力が入らない

このあたりは、旅先では見落としやすいです。「あとひとつだけ見たい」「せっかく、ここまで来たから」と、ついつい頑張ってしまうからです。でも、脱水や熱中症は、そこで無理をすると一気につらくなることがあります。

今の私なら、
「汗をかきすぎて尿が出ない」
「手の甲がしわがれている」
「何回もつまづいてしまう」
このあたりが重なったら、一度きちんと休む方向で考えます。


休んで様子を見たいケース

脱水による体のサインに気付いたら、まずは涼しい場所に移動して、休みながら回復をはかることが大切です。

  • 日陰や冷房のある場所に移動できる
  • 自分で歩いて移動できる
  • 意識ははっきりしている
  • 水分がとれる
  • 少し休むと落ち着いてくる

この段階なら、日陰や冷房のある場所に入って、座るか横になるだけでも違います。帽子や上着をゆるめて、体を冷やしながら水分を少しずつ入れていく。それだけで落ち着いてくることもあります。
ただ、休んでも回復しにくいときは、次の段階として考えたほうがよいです。


早めに切り上げたいケース

休めば何とか動けるとしても、そのまま予定を続けるのはやめたほうがよいことがあります。

  • 休んでもだるさや気持ち悪さが残る
  • 水分はとれても、回復がはっきりしない
  • 動けるけれど、かなり消耗している
  • ふらつき、めまいが目立つ
  • 頭痛が強くなってくる
  • 吐き気がある

こういうときは、観光を続けず宿に戻る。必要なら医療機関も視野に入れる。そのくらいの判断でちょうどよいと思います。

旅先では「病院に行くほどではないけど、無理はしないほうがいい」という範囲の境目が、とても迷いやすいところです。そこまで具合が悪くなる前に、迷ったら切り上げるくらいが安心です。


急いで対応したいケース

次のような状態なら、自分だけで何とかしようとせず、早めに周囲に助けを求めましょう。

  • 意識がぼんやりする
  • 呼びかけへの反応がおかしい
  • 水分をとれない
  • 自分で歩くのが難しい
  • ぐったりして動けない
  • けいれんがある
  • 倒れた

炎天下での広大な遺跡めぐりなど、かなり無理をした野外活動中の場合がほとんどだと思います。

自力ではできることも限られてしまう状況ですが、私であれば、服の上から水をかけて衣服を濡らし、風通しの良い日陰などで助けを求めます。


水分補給は何をどう飲むか

脱水対策というと、「とにかく水を飲む」と思いがちです。もちろん、水分を入れること自体は大事です。
ただ、汗をたくさんかいたときや、脱水が進みかけているときは、水分だけでなく電解質も一緒に失われています。なので、可能なら経口補水液がより適しています。

しかし、海外では、経口補水液が日本ほど気軽に買えないこともあります。そういうときは、水しかないなら水でも十分意味がありますし、スポーツドリンクや果汁入りジュースなどがあれば、水だけより向いています。

大事なのは、完璧な飲み物を探して飲めなくなることではなく、その場で飲めるものを少しずつ入れることです。一気に飲むと気持ち悪くなることもあるので、まとめて飲むより、少しずつ続けて飲んでいくほうが合うことも多いです。


アルコールと炎天下は危ない組み合わせ

旅行中は、ついお酒を飲みたくなることもあります。でも、暑い場所では、この組み合わせはかなり注意が必要です。

アルコールを飲むと、入ってくる水分よりも、結果的に出ていく水分の方が多くなることがあります。また、自分の変化にも気づきにくくなり、水分管理も雑になることもあります。
私がバレンシアで倒れたときも、「炎天下、飲酒、水分不足」という、かなりよくない条件がそろっていました。

お酒そのものが炎天下では向かないとは思いませんが、「日差し対策、アルコール度数低め、水と交互」くらいを意識しておくほうがよいと思います。


まとめ

海外旅行で脱水や熱中症が怖いのは、自分では気づきにくいまま進むことがあるところです。

まず覚えておきたいのは、この3つです。

  • トイレの回数が減る、尿が濃い、立つとふらつく、頭痛がする。こうした小さなサインを見落とさない
  • 水分がとれていて少し休めば楽になるなら、まずは涼しい場所でじゅうぶん休む
  • 意識がぼんやりする、水分が入らない、立てない、倒れた。そういうときは受診も含め早めの対応を考える

脱水や熱中症は、気づかないうちに進む病気です。尿量が少ないとき、皮膚の乾燥があるとき、ふらつきを感じるとき。そのサインに気づけるかどうかが、分かれ目になります。

私自身、倒れたときはまったく前触れに気づけませんでした。その経験があるからこそ、今は「まだ大丈夫」より「少し怪しいな」という感覚を大事にしています。旅の中でそのアンテナを育てておくこと。それが、一番頼りになる備えだと思っています。


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ボンディオラ


調剤薬局の薬剤師として働きながら、一人旅を中心に80か国ほどを訪れてきました。

このブログでは、旅の楽しさだけでなく、体調、準備、不安、旅先での気持ちの揺れについても、旅する薬剤師の視点からやわらかく書いています。