ある盗難の手口
アルゼンチンのブエノスアイレスで、人通りが少ない道を歩いていたときのことです。
突然、首筋に冷たいものを感じました。最初は、頭上の看板から水滴が落ちてきたのだと思いました。反射的に触ってみると、深緑色のドロッとしたもの。
「鳥の糞か……」
そう思った瞬間、今度は髪に。腕に。背中に。顔に。次々と同じものが降りかかってきました。しかも臭い。
完全にパニックに陥った私は、いつもリュックに入れているトイレットペーパーを探して、ファスナーを開けました。
するとどこからか、若い男が2人現れました。「手伝うよ」という雰囲気で、リュックの中に手を伸ばしてきます。私は降りかかる“何か”を拭くのに必死で、振り払う余裕などありませんでした。
しばらくして彼らは、「気をつけろ」とでも言うように立ち去りました。そこでようやく気づいたのです。
リュックに入れていた一眼レフカメラが、消えていました。
あとから知りましたが、これは注意をそらして盗む典型的な手口のひとつです。知っていても防げたかどうかは分かりません。それでも、知っているだけで被害が広がりにくくなることはある。そう思っています。
この記事では、盗難にあったときに最初に何をするか、そのあと警察や保険請求で何が必要になるかをまとめます。
最初の10分
盗難に気づくと、頭が真っ白になります。
でも、やることはある程度決まっています。
全部を完璧にこなすことはできないかもしれませんが、まずは順番を意識して動けると、その後がかなり違うと思います。
場所と時間を残す
最初にやっておきたいのは、どこで気づいたかを残すことです。
旅先では、通りの名前や地名をその場で言えないことがよくあります。
あとから警察で説明しようとしても、意外とここで詰まりやすいです。
スマホがあるなら、Googleマップで現在地にピンを立てる。
周囲に特徴的な建造物があれば、写真を撮っておく。
これだけでもかなり助かります。
あわせて、
- (可能なら)どこで盗まれたか
- 何時ごろか
- 何がなくなったか
この3つをメモしておくと、その後の説明がしやすくなります。
なくなった物を確認する
次に、他に何かなくなった物はないかを落ち着いて確認します。
優先したいのは、こんな順番です。
- パスポート
- クレジットカード
- スマホ
- 現金
- カメラやそのほかの持ち物
なくなった物そのものに意識が向きやすいですが、まずはその後の移動や旅程に直結するものが無事か、確認したほうがよいです。
パスポートがなければ、その後の移動や帰国に関わります。
カードがなければ、支払いだけでなく現金の確保も難しくなります。
スマホがなければ、連絡も地図も使いにくくなります。
カードがなくなっていたら、できるだけ早く利用停止の連絡を入れます。
スマホが手元にあるなら、その場でカード会社の連絡先を調べて進めたほうがよいです。
追いかけない
相手が見えていても、追いかけるのは基本的にはおすすめしません。
複数人で動いていることもありますし、近くに仲間がいることもあります。
混乱しているときに無理に動くと、被害が広がることもあります。
まずは安全な場所に移動して、持ち物の確認と連絡を進める。そのほうが安全です。
警察でやること
保険請求を考えるなら、被害届やポリスレポートはかなり大事です。
私が盗難にあったときは、現地に住んでいた友人が一緒に警察へ行ってくれました。
スペイン語での説明は、1人だったらかなり厳しかったと思います。
特に説明しにくいのが、やはり場所です。
どこで、どう気づいて、何を盗られたか。
ここを整理して伝える必要があります。
だからこそ、盗難に気づいた直後のGoogleマップのピンや写真が役に立ちます。
警察では少なくとも次のことを聞かれることが多いです。
- いつ気づいたか
- どこで起きたか
- 何を盗られたか
- どういう状況だったか
言葉に自信がないときは、メモを見せたり、地図を見せたりしながら進めるだけでも違います。
現在なら翻訳アプリも役に立つでしょう。
保険請求
私は海外旅行保険に入っていたので、盗難の補償を請求しました。
ここで感じたのは、保険請求は書類がほぼすべてだということです。
ポリスレポートはかなり大事
これがないと、おそらく話が前に進みません。
盗難の補償を受けたいなら、まず警察で書類を作ってもらうことが第一歩です。
有名観光地であれば、ツーリストポリスを設置していることもあります。そこであれば、英語が通じる可能性が高まります。
言語の壁で時間がかかることがある
私のときは、警察でもらった書類がスペイン語でした。
そのためか、保険会社側で内容確認に時間がかかった印象があります。
英語以外の書類だと、少し時間がかかることは頭に入れておいたほうがよさそうです。
購入の記録があると助かる
盗られた物について、
- 領収書
- 納品書
- 購入履歴のスクリーンショット
- 型番が分かる画面や写真
こういったものがあると、請求を進めやすくなります。
全部そろっていなくても、分かるものがあるだけで違います。
高額な持ち物は、旅行前にスマホやクラウドに記録を残しておくとあとで助かります。
被害を広げにくくするために
盗難を100%防ぐのは難しいです。
ただ、遭遇する確率を少なくしたり、被害を最小限にするためにできることはあります。
- 人通りが少ない場所で立ち止まらない
- 突然声をかけられても、すぐにバッグを開けない
- 「手伝う」と近づいてくる人と距離を取る
- 高額な物は取り出す場所を選ぶ
- 写真やデータはこまめにバックアップする
私自身、一眼レフ本体と最もよく使っていたレンズはなくしました。
でも、写真のデータは毎晩ハードディスクに保存していたので残っていました。
本体を失ったのはかなり痛かったですが、写真まで全部失わなかったのは不幸中の幸いでした。
盗難対策というと、持ち歩き方やバッグばかりに意識が向きますが、データを守ることもかなり大事だと思っています。
まとめ
盗難にあうと、もちろん動揺します。
でも、最初にやることをある程度知っていると、そのあとの動きの速さが違います。
意識したいのは、この流れです。
- 場所の記録を残す
- なくなった物を確認する
- パスポートとカードを優先して確認
- 警察でポリスレポートを取る
- 保険請求に必要な書類を集める
被害にあわないように対策するのはもちろんですが、万が一の時のために把握しておくと安心です。
次に読む
ほかのテーマもあわせて見たい方は、[シリーズ一覧ページ] から読めます。



