海外旅行中に熱っぽさを感じると、ただの風邪なのか、病院に行った方がいいのか迷いますよね。体調が悪いと、考えがどんどん悪い方に寄っていってしまうこともあります。
日本にいるときなら安静にしつつ様子を見ることもありますが、旅先では少し事情が変わります。慣れない環境、移動疲れ、食事の変化、暑さや脱水に加えて、地域によっては感染症の可能性も考える必要があります。
発熱は、体温の数字だけでは判断しにくい症状です。
同じ38℃台の熱でも、水分が取れているのか、意識がはっきりしているのか、どの地域に滞在していたのか、蚊に刺されたか、下痢や発疹があるかなどによって、考え方が変わってきます。
この記事では、海外旅行中や帰国後に熱が出たときに、危険サイン・滞在地域・行動歴・症状の組み合わせから、どのように動くかを考えるためのチェックリスト的な役割として整理します。
病名を自分で推測するためではなく、「今すぐ相談した方がいいのか」「緊急でなくとも、その日のうちには相談した方がいいのか」「休みながら経過を見てもよさそうか」を考えるための目安として読んでみてください。
海外旅行中の体調不良全般の受診目安を知りたい方は、こちらも参考になります。
この記事で扱う「発熱」について
この記事で扱う発熱は、海外旅行中や帰国後に、感染症など旅先でかかった病気の可能性を考えるためのものです。
たとえば、風邪のような症状、蚊に刺されたあとに出た熱、下痢や嘔吐を伴う熱、熱帯・亜熱帯地域から帰国したあとの発熱などを想定しています。
もともとの持病の悪化、治療中の病気、手術後の体調変化、妊娠中の発熱、免疫を下げる薬を使っている場合などは、この記事だけで判断しない方がよいです。
その場合は、主治医や医療機関、海外旅行保険のサポート窓口に早めに相談してください。
帰国後の発熱では、医療機関にかかるときに「どこへ行ったか」「いつ帰国したか」「現地でどんな行動をしたか」を伝えることが大切です。特に、マラリアやデング熱などが流行している地域に滞在していた場合は、「ただの風邪だろう」と自己判断しない方がよいです。FORTH(厚生労働省検疫所)でも、旅行後の発熱ではマラリアなど迅速な治療が必要な感染症が関係する場合があること、マラリアやデング熱の流行地域から帰国して発熱がある場合は医療機関にかかることを案内しています。
海外旅行中の発熱では、逆に「ただの風邪ではないかもしれない」と不安を感じる場面もあると思います。
いくつかの角度から自分の状態を見ていきましょう。
海外旅行中の発熱は、3段階で考える
海外旅行中の発熱について、この記事では次の3段階で考えることにします。
| 記事内の表現 | 状態 | 次にすること |
|---|---|---|
| すぐ相談・受診 | 危険サインがある、急速に悪化している | 予定を中止して、医療機関・救急・保険会社などに連絡 |
| その日のうちに相談 | 地域リスク、行動歴、症状の組み合わせが気になる | 何日も様子見せず、医療機関や保険会社に相談 |
| 休みながら経過を見る | 軽症で、水分が取れていて、改善傾向がある | 予定を減らし、水分を取り、悪化がないか確認 |
記事内の「相談」というのは、「受診へとつなげること」だと思って読んでください。
海外旅行中は、「受診」といっても、自分で病院へ行くことだけが全てとは限りません。
体調が悪いときに、知らない街で日本語や英語が通じる病院を探すのは、それだけで負担になります。まずは、使える相談先を整理しておくと行動しやすくなります。
たとえば、次のような方法があります。
- 海外旅行保険のサポート窓口に電話する
- ホテルスタッフに近くの医療機関を聞く、手配してもらう
- 大使館・領事館に国際医療機関を聞く
- 現地の救急窓口に連絡する
- 帰国後なら、医療機関に電話して渡航歴を伝える
特に海外旅行保険に入っている場合は、提携医療機関を案内してもらえることがあります。
STEP 1:すぐ相談・受診したい危険サイン
まず確認したいのは、危険サインがあるかどうかです。
次のような症状がある場合は、がまんせず早めに医療機関・救急・海外旅行保険のサポート窓口などへ連絡してください。
- 息苦しい(呼吸が荒い、胸が苦しい、横になってもつらい)
- 意識がぼんやりしている(受け答えがおかしい、反応が鈍い、身の回りのことができない)
- 水分がほとんど取れない(飲む量より出る量のほうが多い)
- 尿が極端に少ない
- ぐったりして動けない(立ち上がるのも難しい、ひとりで歩けない)
- 出血がある(鼻血、皮下出血、血便、吐いた物に血が混じる)
- 今までにない強い頭痛がある
- 強い腹痛がある(冷や汗が出る、じっとしていられない)
- 急速に悪化している
これらのサインは、体が治療なしには対処しきれない状態におちいっている可能性を示しています。
特に、水分が取れない、尿が少ない、意識がぼんやりする、といった状態は、脱水や全身状態の悪化が関係していることもあります。まず安全に相談できる先を探してください。
発熱に加えて水分が取れない、尿が少ないときはこちらも参考になります。
STEP 2:その日のうちに相談したい地域・行動歴
危険サインがなくても、滞在した地域や旅先での行動によっては、早めに相談した方がよいことがあります。
特に、熱帯・亜熱帯地域に滞在していた場合の発熱は、自己判断で長く様子を見ない方がよいです。マラリアやデング熱など、発熱から始まる感染症が関係することがあるためです。
たとえば、次のような地域に滞在していた場合は、発熱を軽く見ないようにします。
- 東南アジア
- 南アジア
- アフリカ
- 中南米
- その他、渡航前に感染症情報が出ていた地域
もちろん、地域名だけで危険かどうかが決まるわけではありません。
同じ国でも、都市部にいたのか、地方や森林に行ったのか、短期滞在だったのか、長く滞在していたのかでリスクは変わります。
渡航先の感染症情報や安全情報は変わることがあります。出発前や滞在中は、FORTHの「海外渡航者向け」「国・地域別情報」や、外務省の海外安全ホームページなどで最新情報を確認しておくと、発熱時にも判断しやすくなります。外務省の感染症危険情報は、渡航・滞在にあたり特に注意が必要と考えられる国や地域について発出される海外安全情報です。
次に、行動歴も大事です。
- 蚊に刺された
- ジャングル、草むらに行った
- 動物に触れた、噛まれた、ひっかかれた
- 生水を飲んだ
- 生ものや屋台料理を食べた
- 標高が高い場所にいる
- 淡水(川、湖)に入った
- 周囲に体調不良の人がいた
「蚊に刺されたあとに熱が出た」「屋台料理のあとに下痢と発熱がある」など、旅先での出来事と発熱がつながっていそうな場合は、その日のうちに相談する目安となります。
行動歴は、医師が原因を考えるための大事な手がかりになります。些細なことだと思うかもしれませんが、受診する際は伝えるようにしましょう。
蚊に刺されたあとに発熱した場合の予防・対策の考え方はこちら。
STEP 3:その日のうちに相談したい症状の組み合わせ
発熱だけでなく、他の症状が重なっているかも確認します。
症状の組み合わせを見ることで、ただの風邪だろうと思っていた状態でも、早めに相談した方がよいケースに気づきやすくなります。
発熱+発疹
発熱に発疹が重なる場合は、特に海外では、ただの風邪ではない可能性があります。
蚊が関係する感染症や、海外渡航と関係する感染症の中には、発熱と発疹が一緒に出るものがあります。病名をここで推測する必要はありませんが、「普通の発熱ではなさそう」と考えて、その日のうちに相談する目安にします。
発熱+強い頭痛・目の奥の痛み
強い頭痛や目の奥の痛みがある場合も注意が必要です。
特に、熱帯・亜熱帯地域に滞在していた、蚊に刺された、急に高熱が出た、という流れの場合は、早めに相談した方がよいです。
デング熱など、蚊が関係する感染症では、帰国後に症状が出ることもあります。厚生労働省は、デング熱の発生地域からの帰国後に症状がある場合、医療機関を受診して海外渡航歴を伝えるよう案内しています。
発熱+強い悪寒、熱の上がり下がり
ガタガタ震えるような強い悪寒がある、熱が波のように上がったり下がったりする、という場合も、その日のうちに相談する目安になります。
特に、マラリアが流行している地域に滞在していた場合は、早めに医療機関へつなげることが大切です。マラリアは発熱から始まることがあり、急速に進行して迅速な治療が必要になる場合があるためです。
発熱+咳・息苦しさ
発熱に咳が重なること自体は、風邪などでもよくあります。
ただし、咳が強い、胸が痛い、息苦しい、呼吸が荒いという場合は、軽い症状として見ない方がよいです。特に息苦しさがある場合は、STEP 1の「すぐ相談・受診」の目安に入ります。
高山病の一種でも同様の症状がでることがあり、標高が高い場所に滞在している場合は特に注意が必要です。
発熱+下痢・嘔吐
発熱に下痢や嘔吐が重なる場合は、一見、よくある食あたりのように見えることもあります。
ただ、海外では地域によってコレラ、赤痢、腸チフスなど、日本ではあまりなじみのない感染症もあります。
旅行中は水分が取れなくなると一気に体力を消耗します。嘔吐が続いて水分が取れない、尿が少ない、ぐったりする場合は、早めに相談してください。
発熱に下痢がある場合はこちらも参考になります。
STEP 4:熱の続き方・悪化のスピードを見る
次に、熱の経過を見ます。
体温の高さだけで判断するのは難しいですが、次のような場合は、その日のうちに相談する目安になります。
- 38.5℃以上の発熱が続いている
- 24〜48時間たっても改善しない
- 急に高熱が出た
- いったん下がった熱がまた上がった
- 熱が波のように上がったり下がったりする
- 新しい症状が増えてきた
- 旅行を続けるのが難しいほどつらい
- 急速に悪化している
「38.5℃以上」「24〜48時間」は、あくまで考えやすくするための目安です。
38.4℃なら大丈夫、38.5℃なら危険、という意味ではありません。
水分が取れているか、意識がはっきりしているか、滞在地域や行動歴に気になる点があるかも、一緒に見ておいてください。
また、海外旅行に関係する感染症は、帰国直後だけでなく、しばらくしてから症状が出ることもあります。帰国後に発熱して受診する場合は、旅行から時間がたっていても、渡航先や帰国日を伝えるようにしてください。
STEP 5:休みながら経過を見る目安
ここまでの項目に当てはまらず、症状が軽く、改善傾向があるか、少なくとも悪化していない場合は、休みながら経過を見るのが現実的です。
次のような状態なら、私自身でもただの風邪とみて様子を見ます。
- 軽いのどの痛み、鼻水、咳程度
- 水分が取れている
- 食事も少し取れる
- 意識がはっきりしている
- 息苦しさがない
- 強い腹痛、発疹、出血がない
- 熱やだるさが少しずつ改善している
- 滞在地域や行動歴に大きく気になる点がない
この場合でも、「予定どおり動く」という意味ではありません。
体調が崩れているときは、観光や移動の予定を減らし、涼しい場所で休み、水分を取りながら変化を見ます。半日〜1日単位で、悪化していないか、新しい症状が出ていないかを確認してください。
もし途中で、息苦しさ、水分が取れない、尿が少ない、ぐったりする、発疹が出る、強い頭痛が出るなどの変化があれば、「休みながら経過を見る」から「その日のうちに相談」または「すぐ相談・受診」に切り替えます。
経過観察は、放置ではありません。
「悪くなったら動けるように準備しておく」ことも含めて考えておくと安心です。
受診・相談するときに伝えたいこと
医療機関や保険会社に相談するときは、発熱そのものだけでなく、旅先での情報も一緒に伝えると話が進みやすくなります。
体調が悪いときは、頭の中で整理して伝えようとしても、うまくできないかもしれません。スマホのメモでも紙でもよいので、分かる範囲で書き出しておくと伝えやすくなります。
- いつから熱があるか
- 最高体温
- 熱が上がったり下がったりしているか
- 他にどんな症状があるか
- 行った国・地域
- 滞在期間
- 帰国(予定)日
- 蚊に刺されたか
- 生水、生もの、屋台料理を食べたか
- 動物に触れた、噛まれた、ひっかかれたか
- 川や湖に入ったか
- 現地でけがをしたか
- 持病
- 服薬中の薬
- 予防接種歴
- 海外旅行保険の有無
受診するときは、「熱があります」だけでなく、「どこへ行っていたか」「いつ帰国したか」「現地でどんな行動をしたか」も大切な情報になります。
特に帰国後に受診する場合は、海外に行っていたことを必ず伝えてください。感染症によっては、渡航歴が診断の手がかりになることがあります。
FORTHには、「旅行後診察用 医療機関受診前のチェックリスト」があります。旅行先、旅行期間、現在の体調、虫刺され、食事や水、現地での治療歴などを整理できる内容なので、必要な方にはかなり実用的です。
まとめ:海外旅行中の発熱は、複数の軸で見る
海外旅行中や帰国後の発熱は、「何度あるか」だけでは判断しにくいです。
大切なのは、危険サイン、滞在地域、行動歴、症状の組み合わせ、熱の続き方をあわせて見ることです。
最後に、もう一度3段階で整理します。
- 息苦しさ、意識がぼんやり、水分が取れない、尿が少ない、出血、強い頭痛、急速な悪化がある
→ すぐ相談・受診 - 熱帯・亜熱帯地域に滞在した、蚊に刺された、動物・生水・生もの・川や湖に入水などの行動歴がある、発疹や下痢・嘔吐などが重なる
→ その日のうちに相談 - 軽症で、水分が取れていて、意識がはっきりしており、改善傾向がある
→ 休みながら経過を見る
旅先では、「せっかく来たんだから」と無理をしがちだと思います。
でも、早めに相談したほうが結果的によい場合も多いです。
病名を見極めようとしてもキリがありません。今の状態をひとつずつ確認して、必要なときは医療機関や保険会社につなげてください。
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参考情報
・外務省 海外安全ホームページ
https://www.anzen.mofa.go.jp/
・厚生労働省検疫所「FORTH(海外で健康に過ごすために)」
https://www.forth.go.jp/index.html
・FORTH 旅行後診察用 医療機関受診前のチェックリスト
https://www.forth.go.jp/useful/attention/pdf/29.pdf







